【キャリア講演会】世界基準の「学び」を知る
~卒業生が語る「国際バカロレア(IB)」と大学での挑戦~
11月18日(火)、本校卒業生によるキャリア講演会をオンライン形式で開催しました。
テーマは、近年注目を集めている「国際バカロレア(IB)」について。
講師には、現在IB教員の養成課程がある都留文科大学で学んでいる、卒業生の豊田美佳さん(教養学部 国際教育学科1年)をお招きしました。IBの仕組みから大学でのリアルな学びまで、深掘りした内容をレポートします。
先輩のリアルな話に、教室の生徒たちも真剣に耳を傾けます
「正解」のない問いに挑む、IBの学び
講演の前半では、IBの成り立ちや具体的なカリキュラムについて、現役大学生ならではの視点で解説していただきました。
Point 1
国境を越える教育システム
もともとは、外交官など海外転勤の多い家庭の子供たちが、「どの国に行っても共通のカリキュラムで学び、大学入学資格を得られるように」作られた制度です。現在では、その教育効果の高さから、日本国内でも導入校が増えています(現在約140校)。
Point 2
「知の理論(TOK)」という授業
IBの特徴的な科目に「TOK(Theory of Knowledge)」があります。「私たちはなぜそれを『知っている』と言えるのか?」といった哲学的な問いに対し、唯一の正解を求めるのではなく、自分なりの答えを導き出すプロセスが重視されます。
Point 3
プロセス重視の評価方法
テストは○×式の暗記問題ではなく、記述式(論述)が中心です。「答えが合っているか」だけでなく、「どのように考えたか」「どう表現したか」が評価対象となります。
IBが育てる「10の学習者像」
IB教育が最終的に目指すのは、単に勉強ができる生徒ではありません。全人教育(人間教育)として、以下の「10の学習者像(IB Learner Profile)」を目標に掲げています。これらはグローバル社会で活躍するために不可欠な「人間力」そのものです。
講演で使用されたスライド資料。これからの時代に必要な資質について解説されました。
1. 探究する人 (Inquirers)
好奇心を育み、探究するスキルを身につけます。自ら進んで学び、その熱意を生涯持ち続けます。
2. 知識のある人 (Knowledgeable)
重要かつ地球規模の問題について考え、概念的な理解を深めながら、幅広い知識を探究します。
3. 考える人 (Thinkers)
複雑な問題に対して、批判的かつ創造的に考える力を使い、倫理的な判断を下します。
4. コミュニケーションができる人 (Communicators)
複数の言語や方法を用いて、自信を持って創造的に自分を表現し、他者と協力して活動します。
5. 信念をもつ人 (Principled)
誠実さと正直さを持って行動し、公正さと正義を重んじます。自分の行動とそれに伴う結果に責任を持ちます。
6. 心を開く人 (Open-minded)
自己の文化や歴史を大切にするとともに、他者の価値観や伝統を尊重し、異なる視点から学ぶ姿勢を持ちます。
7. 思いやりのある人 (Caring)
共感、思いやり、尊重の心を持ちます。人々の生活や環境を良くするために、前向きに行動します。
8. 挑戦する人 (Risk-takers)
不確実な事態にも果敢に立ち向かい、新しい考えや戦略を探求します。変化や挑戦を恐れません。
9. バランスのとれた人 (Balanced)
自分自身や他者の幸福のために、知的、身体的、精神的なバランスの重要性を理解しています。
10. 振り返りができる人 (Reflective)
自分の学びや経験を深く考察し、自分自身の長所や限界を理解することで、学習と成長を促します。
「発言しないと、いないのと同じ」
都留文科大学 国際教育学科のリアル
続いて、豊田さんが在籍する「都留文科大学 教養学部 国際教育学科」のユニークな学びについてお話しいただきました。
圧倒的なアウトプット重視
授業では「発言しない人は、そこにいないのと同じ」と言われるほど、積極的な参加が求められます。帰国子女や多様なバックグラウンドを持つ学生と共に、英語で議論し、プレゼンを行う日々です。
必須の海外留学
卒業要件として半期(6ヶ月)以上の海外留学が義務付けられています。特に教育福祉が進んでいる北欧(スウェーデン、フィンランド、デンマークなど)への留学が推奨されており、現地の教育を肌で学ぶことができます。

先輩への質問も活発に行われました
◆ 未来の「IB教員」を目指して
この学科の大きな特徴は、「IB教員資格(MYP/DP)」が取得できることです。これには30時間以上の実習が必要ですが、取得すれば世界中にある約6,000校のIB校で働くチャンスが広がります。
豊田さんも、将来は世界を舞台に教育に携わることを目指し、日々研鑽を積んでいます。
後輩へのメッセージ
「完璧な英語でなくてもいい。大切なのは『伝えようとする姿勢』です。」
入学当初は周りのレベルの高さに圧倒されたという豊田さん。しかし、事前に話す内容を準備したり、文法の間違いを恐れずに発言したりすることで、次第に自信をつけていったそうです。
「英語はツール。それを使って何を考え、何を伝えるかが重要」という言葉は、生徒たちの心に強く響いていました。
秩父高校の進路指導・キャリア教育について